三猿とは? 「見ざる聞かざる言わざる」の意味や由来とは?

三猿といえば「見ざる聞かざる言わざる」の言葉が有名ですが、この言葉にはどんな意味が込められているのでしょうか。

三猿とは

三猿とは、目、耳、口を隠している3匹の猿のことをいい、「見ざる聞かざる言わざる」という3つの教訓を示しているとされています。

三猿は日本が発祥と思われがちですが、古代エジプト文化などにも見られることから、シルクロードを経て中国から日本へ伝わったといわれています。特にインドのマハトマ・ガンディーは、常に三猿の像を身に付け、「悪を見るな、悪を聞くな、悪を言うな」と教え説いていたとされ、教科書には「ガンディーの三猿」が載っています。

三猿はアメリカにも存在し、教会の日曜学校などでは、三猿を用いて教えを説くことがあるといいます。

日本には漢語の「不見、不聞、不言」を訳したものが、8世紀ごろに天台宗の教えとして伝わったとされています。

このように、三猿は世界各地に存在していますが、その意味合いは、どの国でもほぼ同じであると考えられています。

なぜ猿なのか

三猿は世界各地に存在していますが、各国共通して猿が用いられるのは、どの国でも「猿は神の使い」と信じられているからのようです。

古代エジプトでは、猿(ヒヒ)は神や神の使者として崇められ、ミイラも作られたといわれています。インドでは、猿(ハヌマンラングール)は、ハヌマーン神(ヒンドゥー教の猿の神様)の使いであると考えられています。中国やアフリカでも、猿は神聖な存在とされています。日本でも、ニニギノミコト天孫降臨の際に道案内をしたのが猿だったとの説から、猿は神の使者であるといわれるようになりました。

また、「猿(さる)」は「去る」、つまり「災いを取り去る」ということで、縁起物ともされていました。

猿は高い知能を持ち、人間に最も近い動物であることから、「神の使い」とされるようになったのかもしれません。

「見ざる聞かざる言わざる」の意味や由来

「見ざる聞かざる言わざる」は「見ない、聞かない、言わない」という意味で、「とにかく人間は、自分にとって都合の悪いことや相手の短所などを見たり聞いたり言ったりしがちだが、それらはしないほうが良い」という戒めを表しています。

これは、孔子(中国の思想家)の『論語』にある「非礼勿視、非礼勿聴、非礼勿言、非礼勿動(礼の規則にはずれたものは、見たり聞いたり言ったり行なわないほうが良い)」の教えがもとになっているといわれています。

 

非礼勿視 礼節に背くことに注目してはならない。「見るな」

非礼勿聴 礼節に背くことに耳を傾けてはならない。「聞くな」

非礼勿言 礼節に背くことを言ってはならない。「言うな」

非礼勿動 礼節に背くことを行ってはならない。「するな」

 

 

豆知識

四猿説

孔子の教えは4つなのに、なぜ三猿なのでしょうか。

四猿で表現されたデザインを見ると、「するな」は、両手で股間を隠しています。この「するな」の教えは、「嘘や卑わいなことを言わない」という性的な戒めであることから、露骨な性表現を避けたのではないかと考えられています。

ほかにも、四猿を「しざる」と読むことから「死」を連想させる、などいろいろなことがいわれていますが、その理由は定かではないようです。

 

 

三猿は人の生き方のお手本

三猿といえば、日光東照宮にある三猿が有名です。神厩舎(しんきゅうしゃ:神様に仕える雄の白馬をつなぐ馬小屋)には全部で8面の彫刻がされており、三猿はその2面目に彫られています。この8面は物語形式で人の生き方を教えているといいます。順番に見ていきましょう。

1面目
子どもを抱えた母猿が、手をかざして遠方を見つめています。これは、子どもの将来が豊かであるようにと願う母猿の様子を表しているといいます。

2面目
有名な三猿の場面です。3匹の猿がそれぞれ目、耳、口をふさいでいます。幼年期は好奇心旺盛。何でもすぐ吸収するので、「世の中の悪いことを見たり聞いたり言ったりしないで、素直なまま育ってほしい」という願いが込められているといいます。

3面目
座り込む1匹の猿がいます。これはまもなく独り立ちを迎える猿の姿とされていて、自分の将来に向き合っていかなければならないという覚悟を表しているといいます。

4面目
天を仰ぐように上を向いている2匹の猿がいます。その横には「青雲の志」を象徴する青い雲が彫られています。これは青年期の猿の姿とされていて、「若いころには高い志を持って前に進んでほしい」という願いが込められているといいます。

5面目
1匹は崖下をのぞき込み、1匹はその横に寄り添っています。これは、挫折してしまった猿と友を慰める猿の姿とされています。誰もが経験する挫折。人間は1人では生きていけないこと、家族や友人たちと助け合って生きていくものだということを意味しているといいます。

6面目
物思いにふける様子の猿がいます。これは、恋する猿の姿とされています。年ごろになれば特定の相手に対して恋愛感情を持つようになりますが、必ずしもその恋愛が叶うわけではなく悩むこともあります。いろいろな経験をして大人になっていくことを表しているといいます。

7面目
2匹の猿と青い荒波が彫られています。この2匹は結婚したばかり。この先いろいろなことが待ち受けていると思われるが、「互いに協力しながら荒波を越えていってほしい」という意味が込められているといいます。

8面目
お腹に子を宿した母猿がいます。これは、親になればこその喜びや苦悩などを経験していくことも大切だということを表しているといいます。子どもを産むと、最初の1面目の話につながっていきます。

 

このように、ストーリー性のある8面の彫刻によって、人の生き方を説いているとされています。

 

 

豆知識

お元気三猿

秩父神社(埼玉県秩父市)の本殿には、日光東照宮の三猿とは反対の「よく見る、よく聞く、よく話す」三猿の彫り物があり、「お元気三猿」と呼ばれ親しまれています。

 

 

まとめ

三猿とは、目、耳、口を隠している3匹の猿のことをいい、「見ざる聞かざる言わざる」という3つの教訓を示しているとされる。

どの国でも「猿は神の使い」と信じられている。

三猿は、人としての生き方を誰にでも分かるように教える目的で作られたと考えられる。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!