難を追い払い、福を呼び込み、長寿を授けてくれるという寿老人。
この記事では、寿老人について詳しく説明しています。
寿老人とは
寿老人とは、長寿延命、富貴招福の神で、不老長寿、妙薬、開運、厄除、健康、安楽を司る神といわれています。
竜骨座という星座の中に、「カノープス」と呼ばれる星があります。極めて明るい星なのですが、南半球の星に属するため、日本ではほとんど知られていません。
中国では、かつてこの星は、「寿星」あるいは「南極老人星」と呼ばれていました。寿老人とは、この星を人格化したものとされています。
昔の中国の人々は、稀にしか見ることのできないこの星を、世の中が平和なときにだけ出現するめでたい星と信じていました。
また、皇帝の寿命を支配する星とも考えられていたため、歴代の皇帝たちは、こぞって寿星祠や寿星壇を築き、自らの長寿と天下の平和を祈ったといいます。
カノープスは、約310光年の距離にある、太陽の約50倍の大きさをもつといわれる超巨大な星です。
寿老人の姿
唐代になると、寿星(南極老人星)は、黒い頭巾をかぶり、杖をつく老人の姿で絵に描かれるようになります。日本の七福神中の寿老人の姿は、すなわちこれ。いかにも徳が高そうな仙人の容貌をしています。
寿老人は、手に杖と団扇を持ち、いつも鹿を従えています。
杖
寿老人の持つ杖には一軸の巻物が結び付けられていますが、これには、人間の寿命が記されているといいます。
団扇
団扇は、もちろん風を送るという使い方もありますが、もともとは、難を追い払って福を呼び込むものという考え方により、縁起の良いものとされていました。相撲の軍配なども同様に、聖なる土俵に悪いものが入らないようにという意味があるようです。
寿老人は、この団扇で人々の難を払ってくれている。そうしたことから、諸病平癒などにも功徳があるといわれています。
鹿
鹿は、「鹿」と「禄」が同音であるところから、「延命長寿と福禄の神」であることを表したと考えられています。
この鹿は、長寿を保つという玄鹿(げんろく)といわれています。
鹿という動物は、そもそも長寿の動物として知られており、中国では、蒼い鹿は1000年、白い鹿は1500年、黒い鹿は2000年生きているといわれていました。
鹿は、さらにその端正な姿のイメージもあって、日本でも縁起の良いものとされていました。
寿老人と福禄寿
寿老人と福禄寿は、とてもよく似た容姿をしており、いずれも長寿の神とされているため、同体で異名の神といわれています。そのため、寿老人の代わりに吉祥天、あるいは猩猩(しょうじょう)を加えて七福神とすることもあります。
吉祥天は、ヒンズー教での宇宙の維持神であるヴィシュヌの妃で、幸福の神という意味をもっています。
猩猩は想像上の獣ですが、その姿は犬や猿に似ており、黄毛、人面人足、長髪、端正な顔立ちに、小児の泣くような声に似ているとされています。常に群れをなして伏行し、生まれてからずっと酒を好み、人の言葉をよく理解し、よく語るといわれています。
日本では、室町時代になると、猩猩は海中に住む霊獣とされ、酒を入れるかめの量はくめどもつきぬものと考えられるようになり、猩猩にあやかりたいという俗信を生んだようです。
神社・寺院
寿老人が安置されている主な神社・寺院をご紹介します。
長安寺(ちょうあんじ/東京)
谷中七福神のひとつ。
等身大の寄木彫刻で、左脇に鹿を従えた座像。徳川家康が納めたものといわれている。
妙法寺(みょうほうじ/神奈川)
鎌倉江の島七福神のひとつ。
本堂前の堂に、鹿を従えた櫻一本造りの寿老人像が祀られている。
行願寺(ぎょうがんじ/京都)
都七福神のひとつ。
堂内に安置される寿老人像は、安土桃山時代の作。豊臣秀吉が万人快楽の願いを込めてお祀りしたといわれている。
三光神社(さんこうじんじゃ/大阪)
大阪七福神のひとつ。
宝生寺(ほうしょうじ/兵庫)
淡路島七福神のひとつ。
左手に長寿を意味する桃の実、右手に宝杖を持つ姿の寿老人を祀る。
まとめ
寿老人とは、長寿延命、富貴招福の神。
「寿星」あるいは「南極老人星」の化身とされている。
杖と団扇を持ち、鹿を従えている。
難を追い払い、福を呼び込み、長寿を授けてくれる。
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