月 ~私たちの暮らしに寄り添う月の存在とは? 心身を整える活用法もご紹介~

静かな夜空に光輝く月。その神秘的な美しさに、思わず見とれてしまうことも。月とは、私たちにとってどんな存在なのでしょうか。

 

【目次】

月を知る ~天体としての月の基本知識~

まずは、天体としての月の基本情報を確認していきましょう。

月の基本情報

大きさ
平均直径3475.8㎞ 表面積3800万㎢

表面重力
地球の6分の1

光度
満月が最も明るくてマイナス12.7等級

表面温度(赤道付近)
最低 マイナス170℃ 最高 110℃

地球からの距離
約38万㎞(地球の赤道まわりを9周半したくらいの距離)

 

「月」は、英語で「moon(ムーン)」といいます。その語源は、インド-ヨーロッパ語族の「測るもの」を意味する「mens(メンス)」に由来します。また、イタリア語やスペイン語などでは、「luna(ルナ)」が使われています。

 

月の誕生

月の誕生については諸説あり、現代の科学をしても完全には分かっていませんが、現在では、「ジャイアント・インパクト(巨大衝突)説」が最も注目されています。

ジャイアント・インパクト説
火星程度の大きさの天体が地球に衝突し、そのとき飛び散ったかけらが集まって塊となった。

 

これは、アポロ宇宙船が月へ行って月を調べたあとの説のため、有力な説であることは間違いありませんが、それでも、この説が正しいかどうかの結論は出ていません。

ちなみに、アポロ宇宙船で人類が月に行く前には、次のような説がありました。

捕獲説
ほかから飛んできた物体が、地球の引力に引っ張られて地球の衛星になった。

親子説
地球の一部が飛び出し、月になった。

双子説
地球ができたのと同じころに、同じようにしてできた。

 

月の満ち欠け

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月の満ち欠け

新月から次の新月までの月の満ち欠けを「1朔望月(さくぼうげつ)」といい、その周期は約29.5日です。月は太陽のように自ら光を発することはなく、太陽からの光を反射して輝いています。また、月は地球を公転しているため、日によって太陽の光の当たる所が変化します。

例えば、月が太陽から見て太陽と同じ方向(太陽→月→地球)にあるときには、月の向こう側が太陽の光を反射して光っていますが、地球に対しては暗い面を向けています。このため、月は地球から真っ暗に見えます。つまり、このときの月が「新月」です。

逆に、月が太陽と反対方向(太陽→地球→月)にある場合、月は太陽の光を反射して光っている面を地球に向けています。つまり、このときの月が「満月」というわけです。しかし、月と太陽の並ぶ方向が少しでもずれると、月は細い形となって、あるいは、まん丸ではなくなって見えるのです。

 

月齢

「月齢」とは、月の満ち欠けの状態を知るための目安になる数字のことをいいます。
この数字は、新月から経過した時間を日単位で表したもので、その日の正午の値が暦などに書かれます。新月のときを0:ゼロとして、翌日が1、翌々日が2、…と1日に1ずつ増えていきます。また、月の満ち欠けの周期はおよそ29.5日なので、月齢が50や100といった値になることはありません。

現代では、いつ新月や満月になるのかということは、私たちの日常生活にあまり関係していませんが、かつて1000年以上もの長期にわたり旧暦(太陰太陽暦)が使用されていたころは、人々の生活と密接に関係していました。新月の日が「月のはじめ」と決められ、月を見れば、その日が何日なのかを知ることができたのです。

 

 

豆知識

月齢速算法

月齢は、その日の正午の値を月齢3.2などと小数点の1桁まで表しますが、およその月齢を知るための簡単な計算式も考え出されています。これは、石川英助さんが考案されたもので、1944年に日本天文学会誌にて発表されました。以降、1000年間くらいの期間の月齢を求められる簡便式として使われています。

西暦Y年М月D日の月齢は、まず、y=(Y-1903)でyを求めます。すると、月齢は次の式で計算できます。

月齢=y×11+[y÷20]+М+D

このうち[ ]内は整数部分だけを使い、30以上になったら30以下になるまで30を引いていきます。ただし、1月と2月に限り、前年の13月、14月として計算します。

例えば、2020年4月7日の月齢を計算してみましょう。

y=(2020-1903)=117
月齢=117×11+[117÷20]+4+7
計算値1303から30を43回引いて、つまり、1303-1290=13

よって、2020年4月7日の月齢は、およそ13ということが分かりました。この計算式を使えば、過去・未来の月齢が簡単に求められます。自分の誕生日の月齢を調べてみるのも面白いですね。

 

 

日食と月食

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金環日食

日食とは、新月が太陽の前を通り過ぎて太陽が欠けて見える現象のことをいいます。
これは、月が地球のまわりを公転しながら地球と一緒に太陽のまわりを公転しているため、太陽→月→地球の順番で一直線上に並ぶときがくると、太陽が月に邪魔されて見えなくなることにより起こります。

日食の見え方は、3種類あります。

皆既日食
太陽が新月に全部おおい隠されるため、普段見ることのできない太陽の大気(コロナ)が黒い太陽の周囲に広がって見える。

金環日食
太陽が新月に全部おおい隠されず、太陽の周囲がリング状にはみ出して見える。

部分日食
太陽が新月によって一部分だけ隠されるため、部分的に欠けて見える。

 

月食とは、満月が地球の影の中に入り欠けて見える現象のことをいいます。
これは、月が地球のまわりを公転しながら地球と一緒に太陽のまわりを公転しているため、太陽→地球→月の順番で一直線上に並ぶときがくると、月が地球の影の中に入ってしまうことにより起こります。

月食の見え方は、2種類あります。

皆既月食
月が地球の影によって完全に隠れてしまい、太陽からの光がまったく月に当たらなくなった場合に起きる。しかし、実際には、月は赤黒い色に鈍く輝いて見える。これは、太陽光が地球の大気中で屈折することにより起こる現象で、夕焼けのように月面を照らし出しているため。

部分月食
月が地球の影によって一部分隠れてしまう場合に起きる。

 

 

昔の人々にとっての日食や月食は、なぜ起きるのか分からなかったため、不吉な現象とされていました。平安時代の記録では、「日食が起こると早く終わることを神仏に祈った」とあり、恐れられていたことがうかがえます。

 

 

月の出・月の入り

太陽に日の出・日の入りがあるように、月にも月の出・月の入りがあります。しかし、その定義には違いがあります。

日の出とは、太陽が地平線から顔を出し始めた瞬間のことであり、日の入りとは、太陽が地平線に沈みきって見えなくなった瞬間のことをいいます。つまり、太陽の上辺が地平線(または水平線)に接したときが、日の出・日の入りの時刻ということになります。

一方、月の出・月の入りの時刻は、月の中心が地平線(または水平線)に一致する瞬間と定義されています。よって、地平線上に月の姿が見えていようがいまいが関係ない、ということになります。

 

 

豆知識

月の出

月の出の時刻は、前日より平均50分ずつ遅くなっていきます。すると、「月の出(または月の入り)がない」日が発生することがあります。

例:A月X日 月の出 23時27分
A月Y日 月の出 **時**分
A月Z日 月の出 00時18分

これは、午前0時になると日付が変わってしまうことが原因です。A月Y日中に月の出はありませんが、日付が変わって間もない00時18分に月が出てくるということです。

 

 

月を愛でる ~月に親しむ人々の心~

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三日月

不思議な現象である日食や月食を恐れる一方では、月に呼び名を付けたり、月に関連する言葉や文学が多く作られたりしています。これもまた、人々が月に魅了されていたということの表れとも考えられます。それでは、ひとつずつ見ていくことにしましょう。

日本の月の呼び名

日本では、毎日変化する月の形に合わせた名前を付け、親しみを込めて呼ぶことがあります。心に浮かんだものや心の奥にある風景を月に投影し、月に思いを馳せる日本人ならではの姿ともいえます。

新月(朔:さく)
太陰暦で1日(ついたち)とされる日の名前。朔日(さくじつ)ともいう。
この日の月は、太陽からの光が当たらないため、見ることはできない。
「朔」という呼び名は、昔、新月の日を三日月の日からさかのぼって数えたからだといわれている。なお、「新月」という言葉は、明治時代に英語の「new moon」に由来して付けられたとされている。

 

二日月(ふつかづき)・繊月(せんげつ)
太陰暦で2日目(新月の翌日)の月の名前。
三日月より細く目立たないので、三日月が新月後の初めての月(初月:ういづき)とされるが、条件がよければ、日の入り後の西の空に、ほんの少し西側が細く光っている形が見える。

 

三日月・朏(ひ)・初月(ういづき)・眉月(まゆづき)
太陰暦で3日目の月の名前。
「初月」は、最初に姿を見せる月という意味がある。月の形が女性の眉の形に似ていることから「眉月」ともいわれる。日の入り後の西の空に、西側が細く光るのが見える。

 

弓張月(ゆみはりづき)
三日月以後、上弦の半月までの名前。
見てのとおり、弓を張ったように見えることから名付けられた。

 

上弦の月
太陰暦で7日目ごろの月の名前。
「上弦」は、月が夜半に西の地平線に沈むころ、弓の弦の部分を上にした形で、西側半分が光る半月であることからそう呼ばれている。あるいは、太陰暦の暦月上旬の「弦月(半月)」であることから、そう呼ばれるという説もある。
昼ごろに東の空から昇り、日の入りのころから南の空で見えて、真夜中に西に沈んでいく。

 

十日夜の月(とおかんやのつき)
太陰暦で10日目の月の名前。
かつて、10月10日に「十日夜」と呼ばれる観月の行事を行う習慣があった。

 

十三夜の月
太陰暦で13日目の月の名前。
かつて、9月13日に「十三夜」の月見が行われていた。

 

小望月(こもちづき)・幾望(きぼう)
太陰暦で14日目の月の名前。
小望月は、望月(満月)の前夜という意味がある。
幾望の幾は「近い」という意味がある。

 

満月(望)・十五夜の月・三五の月
太陰暦で15日目の月の名前。
全面が光っている月のことで、日の入りのころに東から昇り、真夜中に南の空に到達し、そして、日の出のころに西に沈んでいく。
「三五の月」は「3×5=15」の意味から付けられたよう。

 

十六夜の月(いざよいのつき)・既望(きぼう)
太陰暦で16日目の月の名前。
「十六夜(いざよい)」とは、「ためらう」という意味。十五夜より月の出が遅れることを「月が姿をあらわすのをためらうからだ」と見なしたことにより付けられたよう。
「既望」は「望月を過ぎた」ことを表している。

 

立待月(たちまちづき)
太陰暦で17日目の月の名前。
日没後、「出るのを今か今かと立って待つほどの時間をおいて昇る月」ということを表現している。

 

居待月(いまちづき)
太陰暦で18日目の月の名前。
「居」は「座る」の意味で、「出るのを立って待つには長すぎるので、座って待つ月」ということを表現している。

 

寝待月(ねまちづき)・臥待月(ふしまちづき)
太陰暦で19日目の月の名前。
「出るのを立って待つにも座って待つにも長すぎるほど遅れ、横になって待つほどの月」ということを表現している。

 

更待月(ふけまちづき)
太陰暦で20日目の月の名前。
「夜更けになってようやく昇る月」ということを表現している。

 

下弦の月(かげんのつき)
太陰暦で22日目ごろの月の名前。
東側半分が光っている半月が真夜中に東から昇り、日の出のころ南の空に見えて、正午ごろに西に沈んでいく。「下弦」は、半月が地平線に沈むころ、弦が下にあることからそう呼ばれている。
「下弦の月」は、月の形を弓の形になぞらえた呼び名だが、太陰暦の暦月下旬の「弦月(半月)」であることから、そう呼ばれるという説もある。

 

二十三夜の月
太陰暦で23日目ごろの夜に昇る月の名前。

 

有明月(ありあけづき)
太陰暦で26日目~27日目ごろの夜明けの空に昇る月の名前。
十六夜以降の月をまとめてこう呼ぶこともある。

 

三十日月(みそかづき)・晦日月(みそかづき)
太陰暦の月末の日の月の名前。
「晦日」は「つごもり」とも読み、新月直前で月が姿を隠す「月隠り」の意味から付けられたよう。

 

 

豆知識

太陰暦と太陽暦

太陰暦とは、朔→上弦→望→下弦→朔と変化する「1朔望月」を基準にして作られた暦のことで、現在もイスラム教の国々で使われています。

一方、太陽暦とは、太陰暦に対する暦の呼び方で、太陽の動きを観察して求めた「1年(365日)」という時間の長さを基準にして作られた暦のことをいいます。

 

 

スピリチュアルな観点から月を見たときに、月は母なるものとされていますが、昔の人々も月を女性的な天体として考えていたように思われます。

新月から満月までは、早い時間から姿を見せ、いかにも明るく活発な少女のような様子をうかがわせ、反対に、満月から次の新月へ向かっていく期間は、人々が起きている時間にはなかなか姿を見せず、奥ゆかしい大人の女性のような様子をうかがわせていますね。

 

 

月のことば

昔、夜の月の輝き、月明かりが貴重だったころ、月はさまざまなことわざや言葉のテーマとなりました。

月にむら雲、花に風
冴え渡る月を愛でようとすると、その月にむら雲がかかり、花が咲けば、強い風に吹かれる。
良いことには障害が付きもので、世の中はとかく思い通りにならないことを例えたものです。

 

月夜に夜なべ
月明かりの夜にも仕事をするという意味で、勤勉なことを例えています。
英語の「moonlight」は、もちろん「月光」の意味ですが、「日中働いたあと、夜にも内職をする」という意味もあります。

 

月とすっぽん
すっぽんは、まん丸な素盆、つまり、物を運ぶお盆がなまったものともいわれます。
まん丸な満月もすっぽんも、どちらも似たような丸い形をしていますが、まるで比べものにならないほどかけ離れていることを例えています。

 

薄明中の五日月
薄明とは、日の出前や日没後の薄明りのことをいいます。
満ち欠けする月は、移り変わるものの例えにもみられ、ポルトガルには「月と恋は満ちれば欠ける」ということわざがあります。

 

鏡花水月
鏡に映った花、水に映った月のように、はっきり見えているのにとらえられないもの、わかってはいても上手に表現できないものの例えです。
英語の「moonshine」は、「月の光」という言葉ですが、「無意味」とか「空想的」という意味も含まれています。「Cry for the moon」は、できないこと、得られないものを欲しがったり望んだりすることをいいます。

 

海月(かいげつ)
海上の空にかかる月や海面に映った月影のことをいいます。
「海月」は「くらげ」とも読みます。海面にただよい揺れ動く月の姿は、まさにそのイメージにぴったりです。
ちなみに、「湖月」は湖面に映った月、「水月」は水に映る月で、実体のないことに例えられます。

 

ブルー・ムーン
ブルー・ムーンは、見ると幸せになれる月とされています。直訳すると「青い月」ですが、月が青く見える現象のことではありません。
1カ月の間に満月が2回あるとき、後のほうの満月を俗に「ブルー・ムーン」と呼びます。2月に満月がないときは、1月と3月に必ずブルー・ムーンがあり、およそ3年に1度は起こるとされています。
英語には「Once in a blue moon」という表現があり、「ごくまれに」「めったに~ない」という意味で使われます。ここから転じて、「ブルー・ムーンはめったに起こらない幸運なこと=見ると幸せになれる」と言い伝えられています。

 

スーパームーン
一般的には、月が地球に最も接近したとき(あるいはその前後)に生じる満月、もしくは新月のことといわれていますが、天文学の用語ではないため、学術的な定義は存在しません。
スーパームーンには満月と新月の両方がありますが、新月は目に見えないため、実感できる満月に注目が集まることが多いようです。公転しながら地球を周回する月の軌道は楕円形をしているため、地球に近づいたり遠ざかったりしています。
スーパームーンと平均的な満月を比べると、スーパームーンのほうが約30%明るく、約14%大きく見えるといわれています。

 

ストロベリームーン

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ストロベリームーン

ストロベリームーンは、6月の夏至のころに見られる、赤みがかった満月のことをいいます。
一年のうちで太陽の南中高度が最も高くなる夏至のころの満月は、真南に昇ったときでも、地平線にずいぶんと近くなります。朝日や夕日が赤く見えるように、月も高度が低いと赤みを帯びて見えるため、地平線に近い空を移動する6月の満月(夏至に近い満月)は、夜中でも赤みがかって見えるのです。
なお、出どころははっきりしませんが、ストロベリームーンは「恋愛成就の赤く輝く満月」ともいわれ、ストロベリームーンを見ると「幸せになれる」「好きな人と結ばれる(結婚できる)」と言い伝えられています。

 

カレンダー
大昔の人々にとって、ひと月の始まりは、姿を消していた月が西空低く見えた日でした。
古代ローマの人々は、最初の細い月が見えると「月が見えたぞ」と叫んで知らせたといいます。その「叫ぶ」という言葉は「カル」といい、そこから一日(ついたち)のことを「カレンズ」といいました。ここから転じて「カレンダー」という言葉ができたといわれています。
カレンダー、つまり暦の語源は「叫ぶ」ということにあったのです。

 

ルナティック
その昔、狂気は月の光の影響で生じると本気で信じられていました。お馴染みのものとしては、怪奇映画などに登場する狼男があります。ふだんはごく優しい人間なのに、満月の夜、月の光を浴びた途端、全身に毛が生え、牙をむき出しにした姿へと変わり、遠吠えをしながら血を求めて歩きまわるというものです。
14世紀末のフランスの国王シャルル六世は、満月になると必ず発狂したと伝えられています。イギリスでは、狂気のことを「ルナティック(lunatic)」といいますが、ルナとはラテン語名の月の女神の呼び名でもあります。

 

ムーンボー
月夜にかかる虹のことで、ナイトレインボーともいわれています。
昼間に見える虹は、太陽の光が大気中の水滴や雨粒によって反射・屈折してできたものです。ムーンボーの仕組みも昼間の虹と同じですが、太陽ではなく、満月の光によって生じます。そのため、街明かりの影響の受けない暗い夜空、満月が低空にいる、大気中の水分が多い、といった条件がそろわないと見ることができません。
ムーンボーが見られる場所として有名なのは、ハワイです。ハワイでは、虹の出現は、地上にメッセージを伝えるために神様が降りてくる瞬間とされ、この世で最も素晴らしい天からの祝福といわれています。

 

 

月に関連する言葉には海外のものも見受けられますが、月の魅力は、各国共通といえそうですね。

 

 

月の文学

人々を魅了する月は、日本の文学にも多く取り入れられています。

月の歌
万葉集には月の歌が約180首あり、太陽の歌22首より圧倒的に多く読まれています。我が国で最も古い月の歌だとされているのが、次の2首です。

 

熟田津(にきたつ)に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎいでな
船出しようと月を待っていた。月も出て潮もちょうどよくなってきた。さあ、今漕ぎ出そう。

わたつみの豊旗雲(とよはたぐも)に入日さし今夜の月夜さやけかりこそ
大海原にたなびく雲に夕日がさしている。今夜の月は清明であろう。

 

万葉集の歌人、額田王(ぬかたのおおきみ)が朝鮮半島に出兵するとき高らかに歌いあげ、中大兄皇子(なかのおおえのおうじ:天智天皇)は、船上でその航海の無事を祈って歌ったものです。

 

雪月花(せつげっか)
日本では、散りぎわの美しさが尊ばれ、桜は散りぎわの潔さ、月も惜しまれるくらいで沈むところが良いとされています。つまり、「雪月花」の美しさは、移ろうはかなさを持ったものばかリというわけです。日本では、「月は惜しまれて入、桜は散るをめでたしとする」とされています。

 

竹取物語
日本の月の物語といえば、何といっても日本最古の小説とされる『竹取物語』のかぐや姫。かぐや姫の昇天は、8月15日の満月の夜。月の使者に月の衣をはおらされると、かぐや姫はそれまでの記憶を一切忘れ、五色の雲とともに月へと昇っていくのでした。

 

 

かぐや姫でお馴染みの竹取物語。竹から生まれたかぐや姫が十五夜の満月の日に月へ帰って行くという話ですが、かぐや姫は、実は月の化身なのではないかという説もあるようです。作者不明という点、月の持つ神秘性から生まれた発想なのかもしれませんね。

 

 

名月

名月とは、年に2つだけの美しい月のことをいいます。最も美しいとされているのが、旧暦8月15日の夜に見える「中秋の名月」です。「(秋の)十五夜」「芋名月」ともいいます。たとえ天候が悪くて姿が見えなくても、「無月」「雨月」といった名前を付け、名月を楽しんでいました。

ちなみに、中秋の名月は満月とは限りません。これは、月が地球の周囲を回るスピードは一定ではなく、新月から満月に至る期間が15日間でない場合があるためです。

中秋の名月に次いで美しいのが、旧暦9月13日の夜に見える「十三夜の月」です。「後の月」「栗名月」「豆名月」ともいいます。中秋の名月を鑑賞する風習が中国由来であるのに対して、十三夜の月見は、日本独自のものと考えられています。

中秋の名月と十三夜の月はセットで見るのがよく、どちらか一方の月見しかしないことを「片月見」といって、縁起の良くないこととされていました。

 

中秋の名月の日付
2020.10.1/2021.9.21/2022.9.10/2023.9.29/2024.9.17/2025.10.6/2026.9.25/2027.9.15/2028.10.5/2029.9.22/2030.9.12/2031.10.1

十三夜の月の日付
2020.10.29/2021.10.18/2022.10.8/2023.10.27/2024.10.15/2025.11.2/2026.10.23/2027.10.12/2028.10.30/2029.10.20/2030.10.9/2031.10.28

 

 

豆知識

中秋と仲秋の違い

旧暦の季節区分では、7月:孟秋、8月:仲秋、9月:季秋の3カ月間が秋とされます。中秋とは、秋の真ん中のこと、つまり、8月15日を意味します。仲秋とは、旧暦8月全体を指します。よって、「仲秋の名月」と書くのは誤りなのです。

 

 

月見

月見とは、「名月を見る(眺める)」ことをいいますが、行事としての特徴は大きく3つに分けられます。

観月
観月のルーツは中国から伝わった名月鑑賞の風習といわれ、奈良・平安時代には「観月の宴(かんげつのえん)」と呼ばれ、夜通し詩歌管弦の遊が催されるなど、華やかな月見の行事が行われていました。
当時は、夜空を見上げるだけでなく、ときには、月見舟に乗って池や川に映った月を愛でることもありました。もともとは身分の高い人々の娯楽であった月見が一般庶民に浸透したのは、江戸時代になってからといわれています。外灯もないような時代に見る月は、現在よりも何倍も美しく見えたに違いありません。

 

祭月
祭月は収穫祭を起源とする祭りで、秋の収穫への感謝と五穀豊穣を祝う初穂祭という農耕行事のひとつと考えられます。里芋や栗、豆といった農作物や団子などを供え、月を祭る行事は、江戸時代以降、農家に広がっていきました。主なお供え物としては、次のようなものがありました。

 

月見団子
お米の粉から作った白いだんごを15個お供えするのが基本。また、通常なら12個、閏年なら13個というように、年によって変わる説もある。

すすき
すすきは、神様が宿る、まだ十分実っていない稲穂の代わりと考えられていた。また、切り口が鋭いことから、魔除けの力もある。お月見をした後は、軒先に吊るすと一年間無病で過ごせるといわれる。

里いも
旬の里いもなど月に似た丸いいも類をお供えする。江戸時代までは、いもといえば里いものことを言った。「きぬかづき」里いもの皮を残してゆでたもの。平安時代の女性が頭にかぶる布をかぶせた傘の名称。そこからのぞく女性の顔を里いもで見立てている。するりとむける皮から白肌が現れることから。

ぶどうなどの果物
ぶどうなどの蔓ものは、月と人間のつながりを強くするといわれている。

月餅
中国では定番の厄払いのお菓子。

どら焼き
丸い形が満月を連想させる。

 

月待
月待は、月そのものを信仰するもので、名月に限らず、三日月や二十三夜の月など特定の形の月が出てくるのを待ち、その姿に手を合わせます。成立年代は不明ですが、日本全国には「月待講」と呼ばれる集まりが多数存在していました。
仏教が伝来すると、仏の縁日と特定の月を結び付けて信仰されるようになりました。特に好まれたのは、十三夜、十九夜(寝待月)、二十夜(更待月)、二十一夜、二十二夜、二十三夜、二十六夜の月でした。
これらの月の出を待った人々の証が「月待塔」として、今でも日本全国に残っています。月待塔とは、二十三夜や二十六夜といった、その場所で待たれた月の名前を刻んだ石塔のことをいいます。

 

 

十五夜とは ~お月見の風習やお供え物について~

 

 

月の模様

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月の模様

月の表面を注意深く観察すると、薄暗い影絵のようなものが見えてきます。昔の人々は、その模様からさまざまな形や姿を想像してきました。

例えば、日本では、「ウサギの餅つき」の姿に見立てられることが多いですが、中国では、「ガマガエル」の姿に見立てられています。これは、月には美しい仙女が住んでいて、普段は醜いガマガエルに変身して身をひそめているというものです。

ほかにも、ヨーロッパでは「カニ」や「本を読むおばあさん」、南アメリカでは「ワニ」というように、その見立て方は実に多彩で、国によっても大きく変わります。

 

具体的な姿や形によるもの
ウサギ、ウサギの餅つき、野ウサギ、女性の横顔、本を読むおばあさん、はさみがひとつのカニ、ロバ、ワニ、木をかつぐ人、吠えるライオン、泣き顔の男、ヒキガエル(影以外の部分)

 

やや漠然としたイメージによるもの
水をかつぐ男女(バイキング)、銀の馬車に乗るセレーネ(ギリシャ)、月に住む少女(ロシア)、バケツを運ぶ女(カナダインディアン)、月に住むロナ(ニュージーランド)、ガマガエル(中国)、月とウサギ(メキシコ古代マヤ、アメリカインディアン)

 

月を活用する ~スピリチュアルな世界から見る月~

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月の満ち欠け

最後に、心身を整える効果が期待できるという月の活用法について解説していきたいと思います。

月はいつでも太陽の光を反射して輝き、地球上の誰に対しても同じようにその姿を見せてくれます。例えば、日本で満月が見られるときは、アメリカでも、地球の裏側に位置するブラジルでも満月です。どこかでは三日月ということはなく、世界中で同じ月を見ているというわけです。

そのせいか、古今東西の月に対するイメージには共通点があります。おおまかには、新月以降が「摂取」のときで、満月以降は「排出」のときとされています。また、満ち欠けの周期を「新月」「満ちていく月」「満月」「欠けていく月」の4つに分け、それぞれに違った意味合いを持たせています。

また、西洋占星術では、月は「変化」を司る星とされています。この「変化」は、身体性や感情など、人間のもっともデリケートな部分を意味します。さらに、月は母なるもの、子どもの養育、日々の生活の基盤となる要素を支配している星でもあります。月の満ち欠け(約28日周期)と女性の身体のサイクルには、深いつながりがあるということもよく言われている事柄です。

ほかにも、新月、満月、日食、月食のタイミングでは、「気持ちが不安定になる」「体調がすぐれない」という人も少なくありません。これらのタイミングでは、節目・ターニングポイントになるため、まさに「変化」するときです。変化のときには方向性が変わるときでもあるため、一時的に気持ちが揺らぎ、不安定になりやすくなるのです。

では、実際にどんなことに意識を向けると心身が整いやすくなるのか、具体的に見ていきましょう。「新月」「満ちていく月」「満月」「欠けていく月」「日食と月食」の5つに分けてご紹介していきたいと思います。

 

新月(1日目)

新月のキーワードは、浄化・解毒・決断・再生です。

満ち欠けの周期の初日にあたる新月は「始まり」を象徴し、昔、神聖な日とされていた新月の日は、月が人にインスピレーションを与えると考えられていました。ふとわいたアイデアやひらめきに従って行動してみるのも、良い結果を得る一つの方法です。また、新しいことを始めるのにはベストタイミングなので、やりたかったことに思い切ってチャレンジしてみるのがおすすめです。

美容と健康のテーマは、「デトックス」です。
半身浴で汗をかいたり、プチ断食で胃腸を整えたりと、体の内側からすっきりさせることがポイントです。

新月は、太陽と月がちょうど同じ方角にくるため、太陽の光によって月の姿が消えてしまうタイミングです。この新月の3日後くらいには再び姿を表しますが(三日月)、新月は言わば「死と再生」を意味しています。「一度姿を消して、再び生まれる」ということから、「無から有が生まれるとき」ということをイメージさせます。

このようなことから、新月はひとつのサイクルの終わりと始まりの地点にあたり、「新たに物事を始める力」があるとされ、願い事をするのに向いていると考えられています。

 

満ちていく月(2日目~14日目ごろ)

満ちていく月のキーワードは、摂取・成長・活動・集中です。

日に日に満ちていく月は「活力」を象徴し、昔の人々は、月の影響で吸収力が高まり、成長が促される時期と考えていました。気持ちが前向きになり、集中力も高まってきますので、見るもの、聞くもの、口にするものに意識を向け、積極的に行動してみるのがおすすめです。

美容と健康のテーマは、「体づくり」です。
栄養価の高い食事をとったり、すきま時間に筋トレをしたりと、理想のボディをイメージしながら取り組むことがポイントです。

新月から満月までの月が満ちていく期間は、あらゆるものを「吸収する力」が高まるため、心身のエネルギーも高まり、新たにスタートさせたことが大きく成長していく期間といえます。

 

満月(15日目ごろ)

満月のキーワードは、吸収・結実・高揚・衝動です。

まん丸の形をした満月は「豊かさ」を象徴し、昔の人々は、満月は月の力が最も高まり、人の心にも影響を与えると考えていました。月の満ち欠けの周期の折り返し地点である満月は、新月の日に始めたことが実を結ぶころでもありますが、気分も高揚しやすく、衝動的になりやすい時期でもあります。欲を出し過ぎることのないよう現状を冷静に受け止め、これまでの行動の見直しをするのがおすすめです。

美容と健康のテーマは、「癒し」です。
月に一度のスペシャルデーとして、リラックスすることを心がけることがポイントです。

満月は、月が満ちピークに達するもっとも華やかなターニングポイントとなるタイミングです。新しく始めたことが大きな山場を乗り越え一段落するときです。満月の日は、心身のエネルギーもピークに達し、感情も高ぶりやすくなります。また、ピークを迎えた喜びとともに、これから徐々に向かっていく次のサイクルに不安と孤独を感じて、少し落ち込んでしまう人もいるようです。

 

欠けていく月(16日目~30日目ごろ)

欠けていく月のキーワードは、排出・調整・吟味・休息です。

日に日に欠けていく月は「沈静」を象徴し、昔の人々は、欠けていく月のイメージから、排出の力が高まる時期と考えていました。次の新しいサイクルから再び動き出すための準備期間でもありますので、環境を整えたり、ため込んだストレスを処分したりと、自分自身のメンテナンスをするのがおすすめです。

美容と健康のテーマは、「セルフケア」です。
自分の手を使って、自分の体をいたわるようにマッサージをすることがポイントです。

満月から次の新月までの月が欠けていく期間は、折り返し地点でもあり、これまでやってきたことを見直したり、いらないものを手放したりすることが必要となってきます。それは、新しく始めたことを軌道に乗せていくような、地道な努力の期間ともいえます。

そして、再び新月を迎えるころには、新しいアイデアや事柄にチャレンジをしていく。全く同じことの繰り返しのように見えますが、小さな「死と再生」を繰り返している私たちは、サイクルごとに生まれ変わっているのです。

 

日食と月食

日食と月食。これらは、どちらも特別な満月、新月とされています。

日食と月食はワンセットで、年に2度、半年おきにやってきます。新月と満月は1カ月のサイクルですが、食は半年から1年の「スタート」と「結実」を司るといわれています。食の時期は、長期的な活動をスタートさせたり、長い期間の積み重ねが形になったりするような節目です。このような節目にも、折り返しによる反省と軌道修正のための見直しを行うことが必要だと考えられます。

 

まとめ

天体としての月の基礎知識から、月を活用した心身の整え方まで、いろいろな角度から「月」というものを考えてみました。恐れながらも親しみを感じずにはいられない月。やはり、私たちを魅了する不思議な存在なのだということに改めて気付くことができます。

また、月を暮らしに取り入れることは、心身のバランスを整えることにも大いに役立ちます。月のように、いつも穏やかな気持ちで過ごしたいものですね。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!