かぼちゃ ~かぼちゃはどんな野菜? パンプキンと呼ぶのは間違っている? ~

ハロウィンやシンデレラの馬車でおなじみのかぼちゃは、形や大きさ、色などがとてもバラエティ豊か。知れば知るほどおもしろい野菜です。

 

かぼちゃは栄養価の高い野菜

かぼちゃは栄養価の高い野菜

かぼちゃのデータ

分類
ウリ科カボチャ属

原産地
南北アメリカ大陸

旬の時期
5~11月

食べる部位
果実

呼び名
英語
pumpkin(パンプキン) / squash(スクワッシュ)

フランス語
potiron (ポティロン)/ citrouille(シトルイユ)

イタリア語
zucca(ズッカ)

中国語
南瓜(ナングァ)

 

栄養と成分
栄養価の高さはトップクラス。特にβカロテンが豊富で、肌や粘膜を強くし、免疫力を高める。皮に多く含まれるため、皮ごとの調理がおすすめ。さらに、油と一緒に調理すると、吸収力がアップする。

ビタミンE
細胞の老化を防ぐ。βカロテンやビタミンCなど、ほかの抗酸化ビタミンと一緒に食べると効果的。

ビタミンB2
三大栄養素(糖質、脂質、たんぱく質)を効率よくエネルギーに変える働きを助ける。

βカロテン
体の中でビタミンAに変わる。目や鼻、のどの粘膜や、皮ふのうるおいを保つ。

ナイアシン
ビタミンBの仲間。糖質や脂質をエネルギーに変える働きを助ける。

 

 

かぼちゃには、持ち運びしやすく、保存がきき、栄養豊富で、冷凍しても品質が変わりにくいという特徴もあります。日本に伝わったのは、1500年代半ばといわれています。カンボジアで栽培されたものが伝えられたため、「カンボジア → かぼちゃ」という名で呼ばれるようになったといいます。

 

 

かぼちゃ、ズッキーニ、トマト、とうもろこし、いんげん豆、じゃがいもなど、今では世界中に広まっている多くの野菜は、アメリカ大陸が原産地です。1492年、コロンブスがアメリカ大陸にたどり着いて以降、ヨーロッパに持ち運ばれ、次々に世界各地に伝わり、人々の食生活にも大きな変化を引き起こしました。

 

 

豆知識

おいしいかぼちゃの見分け方

  • へたが枯れて乾いている
    かぼちゃは、収穫後すぐに食べると渋味があり、あまり甘くありません。しかし、2週間から1か月間、風通しのよい日陰に置いて追熟させると、でんぷんが糖に変わり、甘みが出てきます。
  • 皮につやがある
  • 切り口が色鮮やかである
  • 種がしっかり詰まっている
    1個の西洋かぼちゃには、300~400個の種が入っているといいます。種の中には子葉があり、発芽するための養分が蓄えられています。

 

 

かぼちゃは葉も花も実も大きい野菜

夏の日差しのもとで勢いよく育つかぼちゃは、葉も、花も、実も大きい野菜です。根から水分と養分を吸収し、親づるをのばし、何本もの子づる、孫づるができて、やがて地面が見えなくなるくらい、畑一面に葉を茂らせます。

「つる」とは、地面をはってのびる茎のこと。「親づる」から枝分かれして「子づる」ができ、さらに「孫づる」ができる様子は、まるで大きく枝を茂らせる大木のようです。親づるは、10メートル近くのびることもあります。

茂った葉が地面をおおうようになると、日差しがさえぎられ、実が大きくなるのを邪魔する草は生えなくなります。葉で光合成を行いながら生育し、花を咲かせて、実を大きくします。1個のかぼちゃを実らせるためには、15~20枚の葉が必要とされています。

 

 

光合成とは、植物の葉が光のエネルギーを利用して、空気中の二酸化炭素と水をもとにして、でんぷんなどの養分を作り、酸素を出す働きのことをいいます。

 

 

花は朝日が昇るころに開き、夕方にはしぼんでしまいます。受粉する力は、めしべもおしべも朝早いほど強いと考えられています。受粉はミツバチにより行われ、花から花へと飛び回り、雄花の花粉を雌花に運びます。

つるをそのままのばしておくと、1株に40~50個の実が付くことがあります。実が多いと1個1個が小さくなり、味が悪くなるので、3~4個の実を残してほかの実は摘み取ってしまいます。これを「摘果(てきか)」といいます。

 

 

豆知識

雌雄異花植物(しゆういかしょくぶつ)

キャベツや大根などのアブラナ科、トマトやピーマンなどのナス科の花は、ひとつの花にめしべとおしべがある両性花。雌雄同花植物とも呼ばれ、植物では最も多い種類です。

これに対して、かぼちゃなどのウリ科は、雌花と雄花がある雌雄異花植物。つるには先に雄花が付き、つるがのびるにつれて雌花が付くことが多いです。

 

 

かぼちゃの種類

かぼちゃの種類はバラエティ豊か

丸いかぼちゃ、細長いかぼちゃ、でこぼこしているかぼちゃ、手のひらに乗るくらい小さなものから、大人の体重より重いかぼちゃなど、世界にはいろいろなかぼちゃがあります。

日本では、日本かぼちゃ、西洋かぼちゃ、ペポかぼちゃの3種類が作られています。

 

日本かぼちゃ(モスカータ種)

日本かぼちゃは、別名「とうなす」とも呼ばれます。縦に溝が入り、ごつごつしているものが多く、ねっとりしていて、甘みが少ないのが特徴です。北海道などの高冷地栽培が可能な西洋かぼちゃが幕末に入るまでは、主流な品種になっていました。

日本かぼちゃの渡来には、2つの説があります。

ひとつは、天文10年(1541)にポルトガル船が豊後(ぶんご:現在の大分県)に漂着したことがきっかけとなって、かぼちゃの種が伝わったとする説です。

もうひとつは、天正年間(1573~1592)に、ポルトガル人によって長崎に伝えられたという説です。

1500年代後半、貿易大国だったポルトガルとの交易が盛んに行われ、とうもろこしも同時期に伝えられました。日本かぼちゃはその後、各地に広まり、さまざまなタイプが生まれました。

1960年代になると西洋かぼちゃが好まれるようになり、いったんは生産量が減りましたが、土地の暮らしを伝える野菜として見直され始めています。

 

 

西洋かぼちゃ(マキシマ種)

西洋かぼちゃは、別名「くりかぼちゃ」とも呼ばれます。表面がつるつるしているものが多く、ほくほくしていて、甘みが強いのが特徴です。

幕末の1862年、アメリカから新しいかぼちゃの種が伝わりました。日本かぼちゃとは違う種類だったので、「西洋かぼちゃ」と呼ばれるようになり、北海道などの寒冷な土地で栽培が盛んになりました。

1800年代後半、開拓時代の北海道でよく作られていたのは、まさかり(大きな斧)でなければ割れないほど固い「まさかりかぼちゃ」でした。現在では、このかぼちゃは「まさかり岩男」という名前で、かぼちゃプリンなどに加工されています。

西洋かぼちゃは、洋風料理やスイーツに向くことから、現在では、かぼちゃの生産量のほとんどを占めています。

 

コリンキー
生のまま、皮ごと食べられるかぼちゃ。食感はシャキシャキとして、味はさっぱりしている。

ロロンかぼちゃ
ラグビーボールのような形のかぼちゃ。ほくほくした食感で、控えめな甘みがある。

赤皮栗かぼちゃ
金沢県の伝統的な野菜のひとつ。果肉がオレンジ色で、しっとりとした食感が楽しめる。

くろだねかぼちゃ
ほぐした果肉が、ふかひれに似ている。アジアでは、スープに入れて食べられることが多い。

 

 

ペポかぼちゃ(ペポ種)

「ペポ」とは、ラテン語でウリの仲間のこと。ペポかぼちゃは種類が多く、その代表はズッキーニと金糸瓜です。

 

ズッキーニ(zucchini)

ズッキーニ

見た目はキュウリに似ているが、実はペポかぼちゃの一種。日本では、1980年代に新顔野菜として登場。フランス料理やイタリア料理によく使われる野菜で、あっさりした味が特徴。

ズッキーニには「つる」がなく、茎を四方八方に広げ、その中心に雌花と雄花ができて、受粉し、実がなる。ほかのかぼちゃのように、成熟した実を食用にするのではなく、未熟な実を食用にする。

フランスやイタリアでは、ズッキーニの花も野菜売り場に並んでいるという。花の中にチーズやトマトを詰めて、焼いたり揚げたりして食べられている。

金糸瓜
金利瓜は100年ほど前に中国から伝えられ、各地で栽培されるようになった。果肉をゆでると、そうめんのような糸状になることから「そうめんかぼちゃ」とも呼ばれ、しゃきしゃきした歯ごたえがある。英語ではSpaghetti squash と呼ばれる。

おもちゃかぼちゃ
おもちゃかぼちゃは、ハロウィンの飾りなどに使われる。食べてもおいしくないため、食用には向かない。アメリカで「パンプキン」といえば、このかぼちゃのことをさす。

 

 

豆知識

かぼちゃは水に浮く?

野菜を水に浮かべてみると、実もの野菜は浮きやすく、根もの野菜は沈みやすい。では、大きくて重いかぼちゃは…。実は水に浮くのです。

地上で育つ野菜は細胞内に空気が入りやすく、地下で育つ野菜は空気が入りにくい、というのがその理由です。

 

 

かぼちゃと人々の暮らし

かぼちゃは、食用としてだけではなく、私たちの暮らしの中にもさまざまに取り入れられています。

かぼちゃとインディアン

広大な北アメリカ大陸では、アメリカ・インディアンの部族が、それぞれ固有の文化や生活習慣で暮らしていました。畑を耕しながら暮らしを営んでいる人々にとって、とうもろこし、いんげん豆、かぼちゃの3種類は特に重要な作物で、「三姉妹」と呼んで、畑で一緒に育てていました。

イロコイ族の人々は、「三姉妹」には霊的な力があると信じていました。星明りの夜、とうもろこしを長姉とする3つの作物は、人間の姿になるという美しい伝説が伝わっています。

インディアンの人々は、かぼちゃでいろいろな料理を作っていました。かぼちゃを丸ごと、熱い灰の中に入れて蒸し焼きにする料理は、後にパイ皮を使う「パンプキン・パイ」へと進化しました。今では、アメリカやカナダを代表する料理、バーベキューやコーンブレッドもインディアンの調理法を受け継いでいます。

かぼちゃは、ピルグリム・ファーザーズの命を支えた作物ともいわれています。1620年11月、イギリスから大西洋を渡ってやって来た清教徒(ピルグリム・ファーザーズ)が、北アメリカ大陸東部に上陸しました。

しかし、食料不足と寒さから次々に命を落としてしまいます。そのとき、ピルグリムたちを助けようと、とうもろこしやかぼちゃの栽培法を教えたのがインディアンでした。

そこで、感謝の気持ちを伝えるために、インディアンの人々を招いて収穫祭を開きました。この行事は「感謝祭」となり、アメリカでは11月第4木曜日、カナダでは10月第2月曜日が公的休日となっています。

 

 

コロンブスがアメリカ大陸をインドと勘違いしたことから、南北アメリカ大陸の先住民は、インドの人=インディアンと呼ばれるようになりました。その後、「ネイティブ・アメリカン(アメリカ先住民)」という呼び名も用いられましたが、この場合には、アラスカやハワイ諸島の先住民も含まれます。

 

 

かぼちゃとハロウィン

ジャック・オ・ランタン

ハロウィンには、かぼちゃのちょうちん「ジャック・オ・ランタン」が欠かせません。もともとは大きなかぶを使って作っていましたが、アメリカにハロウィンの風習が伝わると、中をくり抜きやすいかぼちゃが使われるようになりました。

 

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かぼちゃとシンデレラの馬車

かぼちゃは、16世紀初めにヨーロッパに伝わりました。人々は今まで見たことがない大きな実に驚き、想像力を膨らませました。世界各地には、かぼちゃが出てくる昔話がたくさんあり、かぼちゃが乗り物や家に例えられることもあります。シンデレラの馬車も、中をくり抜けば空間ができることから生まれたアイデアと考えられます。

 

かぼちゃと冬至

冬至は、一年で最も昼が短く、夜が長い日です。毎年12月22日前後のことをいいます。この日にかぼちゃを食べると、一年間健康に過ごせるといいます。新鮮な野菜が少なくなるころなので、保存しておいたかぼちゃを食べて栄養を補い、寒い冬を乗り切ろうという、生活の知恵でもありました。また、冬至には風呂にゆずを浮かべた「ゆず湯」に入る習わしもあります。

 

かぼちゃコンテスト

アトランティック・ジャイアント

かぼちゃには、本物の馬車が作れるくらい巨大なものもあります。「アトランティック・ジャイアント(大西洋の巨人)」と呼ばれるペポかぼちゃの仲間で、家畜の飼料用として利用されています。

巨大かぼちゃは、実が大きくなるにつれて自分の重みのためにつぶれていき、しもぶくれ型になります。収穫のときには、リフトで吊り上げます。

世界各地で開かれている巨大かぼちゃ大会では、毎年のように記録が更新されています。2013年10月のアメリカ大会では、922キログラムのかぼちゃが優勝し、世界新記録に輝きました。

 

 

ドイツやアメリカでは、巨大かぼちゃをくり抜いた「かぼちゃレガッタレース」が行われているそうです。

 

 

まとめ

かぼちゃは、栄養価の高い野菜。特に、βカロテンが豊富。

かぼちゃは、形や大きさ、色など、さまざまな種類がある。日本では、日本かぼちゃ、西洋かぼちゃ、ペポかぼちゃの3種類が作られているが、主流は西洋かぼちゃ。

「パンプキン」と呼ばれるかぼちゃは、食用ではないおもちゃかぼちゃのことをいう。

かぼちゃは、食用としてだけではなく、私たちの暮らしの中にもさまざまに取り入れられている。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!