節句と日本の暮らしは、密接に関係しています。日本の暮らしの原型であり基盤となる節句には、どんなものがあるのでしょうか。
旧暦と新暦
まずは、旧暦と新暦の違いを明確にしていきましょう。
旧暦
旧暦とは、太陰太陽暦のことをいいます。月の運行を基にした「太陰暦」に、太陽の運行を基にした「太陽暦」を組み合わせたものです。
旧暦の基本は中国で作られた「農暦」で、日本では飛鳥時代に輸入され、明治の初めまで約1200年間使われていました。季節の変化に合わせた自然暦であり、農業の指針となる重要なものでした。
旧暦では、暦と季節のズレを調節するために、19年に7度、1年が13カ月ある年(閏年:うるうどし)を設けます。13カ月目を閏月(うるうづき)といいます。
新暦
新暦とは、太陽暦(グレゴリオ暦)のことをいいます。地球が太陽の周囲を一公転する時間を1年とする暦で、今では世界の標準暦として使われています。日本では、旧暦に替わり、明治6年から採用されました。
新暦では、4年に1度、1日多い年(閏年)を設けます。この追加される1日は、閏日(うるうび)といいます。
新暦でも誤差を調整する作業は必要ですが、旧暦に比べると、生じるズレは格段に小さくなりました。
旧暦と新暦が招く混乱
日本の年中行事の多くは、旧暦時代に生まれたものがほとんどです。そのため、日本では、新暦を使用している現在でも、特に季節感を重視するものは、旧暦の日付に合わせて行われることが多いようです。
しかし、旧暦から新暦に変更する際、明治5年12月3日を明治6年1月1日としたため、約1か月のズレが生じてしまいました。
このズレこそが、行事本来の意味や季節を感じにくくさせ、行事に欠かせない植物が手に入りにくい事態を起こしているのです。(例えば、桃の節句にもかかわらず桃の開花時期ではない、など。)
節句と日本の暮らし
節句とは、「節:気候の変わり目」「句:くぎり」という意味です。人々は気候の変わり目がやってくるたびに身を正し、気候に応じた作業を行ったり、旬の食物を食べることで邪気を祓ったりしていました。
これが日本の暮らしの原型であり、このリズムこそが日本の暮らしの基盤となるものでした。
節句はさまざまありますが、大きく4つに分類できます。
五節句
五節句とは、中国から伝わった風習で、江戸時代に幕府が公的な行事として定めた5つの節句のことをいいます。
1月7日・人日(じんじつ)
3月3日・上巳(じょうし)
5月5日・端午(たんご)
7月7日・七夕(しちせき)
9月9日・重陽(ちょうよう)
奇数を陽の数とし、奇数が重なることを尊ぶ陰陽説からきています。日本では、江戸時代に庶民へと広がりました。
二十四節気
二十四節気とは、太陽の運行で1年を24等分して、春夏秋冬の季節を表したものをいいます。各一節は、約15日間です。
太陰太陽暦が採用される以前は、月の運行を基にした「太陰暦」が使われていました。太陰暦は、月の満ち欠けにより日付を知ることはできましたが、季節を読み取る機能はありませんでした。
そこで、季節も読める暦として編み出されたのが、二十四節気でした。中国で考案されたため、中国北部独特の季節感を盛り込んだ名前が付けられていますが、現在でもそのまま使われています。
七十二候
七十二候とは、二十四節気の各一節をさらに約5日間ごとに分け、動植物の様子や気候の変化を漢文調の短い文で表したものをいいます。
七十二候も中国で考案されたため、中国の気候や風物を強く反映しており、日本の気候には合わない点も多くありました。
そのため、江戸時代以降に日本の風土に合わせてアレンジされ、現在では、明治時代に改定されたものが使われているとされています。
雑節
雑節とは、日本の気候風土から生まれた節目のことをいいます。古代中国で作られた二十四節気や七十二候に対し、日本特有の季節の変化や習慣から作られているため、日本人の暮らしに密接しているものといえます。
基本は、節分、彼岸、社日(しゃにち)、八十八夜、入梅(にゅうばい)、半夏生(はんげしょう)、土用、二百十日、二百二十日の9つですが、これに、初午(はつうま)、三元(さんげん)、盂蘭盆(うらぼん)、大祓(おおはらえ)を加える場合もあります。
節分
新暦2月3日。立春の前日で、邪気払いのために豆まきをする。
彼岸
新暦3月21日ごろと新暦9月23日ごろ。春分、秋分をはさんだ7日間で先祖供養をする。
社日
春分と秋分に最も近い戊(つちのえ)の日。春は五穀豊穣、秋は収穫を土地の神に感謝する。
八十八夜
新暦5月2日ごろ。立春から88日目で、遅霜に注意が必要なころ。
入梅
新暦6月11日ごろ。黄経(こうけい:太陽の経路)が80度を通過する日。
半夏生
夏至から11日目。薬草の半夏が生える梅雨明けの時期。田植えを終える目安となる。
土用
立春、立夏、立秋、立冬直前の18日間。主に夏の土用を指し、土に関わる作業は禁忌とされる。
二百十日
新暦9月1日ごろ。立春から210日目で、台風がやってくる時期。
二百二十日
新暦9月11日ごろ。立春から220日目で、台風が集中する時期。
初午
2月最初の午の日。各地の稲荷神社の祭礼。
三元
新暦1月・7月・10月の15日。古代中国の道教の行事。
盂蘭盆
新暦8月13~16日。俗に「お盆」と呼ばれ、先祖の霊を祀る期間。
大祓
新暦6月30日と12月31日。半年分のけがれを落とし、残りの半年の無事を祈願する。
まとめ
節句とは、「節:気候の変わり目」「句:くぎり」という意味。
人々は、気候の変わり目がやって来るたびに身を正し、気候に応じた作業を行ったり、旬の食物を食べることで邪気を祓ったりしていた。
五節句、二十四節気、七十二候、雑節が暮らしの基盤となっている。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!