二十四節気とは? 七十二候って何? ~季節を表す美しい言葉を知ろう~

二十四節気や七十二候は、どちらも季節を知るための工夫により作られました。二十四節気や七十二候を通して、刻々と変化する自然の移り変わりの美しさや昔の人々の繊細な心に触れてみましょう。

二十四節気・七十二候とは? ~季節を知るための工夫から作られた言葉~

二十四節気とは、春夏秋冬の季節を表した言葉です。太陽の運行で1年を24等分し、それぞれ時候を表す名前が付けられています。農作業との関わりが深いことが特徴です。

七十二候とは、二十四節気の一節をさらに5日ごとに分けて季節を表した言葉です。めまぐるしく変わる季節の変化を、3~4文字の漢文調の短い文で表現していることが特徴です。

どちらも季節を知るための工夫により作られた言葉とされています。

二十四節気・七十二候 ~季節を表す言葉が作られた背景を知ろう~

二十四節気や七十二候で表される言葉が作られる前は、人々は月の満ち欠けを頼りにした「太陰暦」を使用していました。太陰暦では月の姿が日付を表しているため、今日が何日であるかを知ることはできましたが、季節を読み取る機能はありませんでした。

そこで編み出されたのが「二十四節気」です。二十四節気により1年の季節の変わり目を大まかに把握することができるようになりました。

さらに工夫が進むと「七十二候」が付け加えられました。植物や生き物の変化を読み取ることで、より細かく季節を感じ取ろうとしたのです。

昔の人々の生活にとって最も重要なものは農作業でした。現在ほど技術が発展していない時代には、自然の変化を細かく読み取ることが必要だったのです。

 

 

気候という言葉は、二十四節気の「気」と七十二候の「候」を合わせたものです。二十四節気七十二候こそが、実は気候そのものだった、というわけです。

 

 

二十四節気・七十二候 ~季節を表す美しい言葉を一覧でご紹介~

二十四節気・七十二候には、全部で96の言葉があります。順を追って読み進めていくと、四季の移り変わりの美しさが目に浮かんでくるようです。

それでは、ひとつずつ解説していきましょう。

 

 

旧暦(太陰太陽暦)は、飛鳥時代から明治5年まで約1200年間使用された暦のことです。新暦(グレゴリオ暦)に改暦する際、明治5年12月3日を明治6年1月1日としたため、約1か月のズレが生じてしまいました。季節を読み解く際には、このことを念頭に置いておくことがポイントです。

 

 

まずは、春の季節を見ていきましょう。
春は、旧暦では1~3月、新暦では2~4月ごろのことを指します。

初春 旧暦1月 新暦2月

旧暦の時代では、初春は、年が改まった晴れやかさと、待ち望んだ春を迎えた喜びとが重なる最も華やかな時期だったと想像されます。現代では「早春」と呼ぶことが多いようです。

鳥,鶯,青色

鮮やかな羽の色のうぐいす

立春(しっりゅん)新暦2月4日ごろ。

春の気配が立ち始めるころ。東から吹く春の風、いつの間にか薄くなっている氷、鴬の初音、水面に泳ぎ出てくる魚たち。小さな変化に春の訪れを感じます。

東風解凍(はるかぜこおりをとく)新暦2月4日~8日ごろ。
春を呼ぶ嵐が氷をとかす時期。東は五行思想では春に当てられることから、東風は春を連れてくる風と考えられていました。日本では古くから「こち」とも呼ばれています。

黄鶯睍睆(こうおうけんかんす)新暦2月9日~13日ごろ。
鶯(うぐいす)が鳴き始める時期。鶯の美しい声は春を告げる声として、昔から心待ちにされてきました。「睍睆(けんかん)」は「鳴き声のよい」、「見目よい」様子を意味します。

魚氷上(うおこおりをのぼる)新暦2月14日~18日ごろ。
氷の間から魚が飛び跳ねる時期。春の訪れを感じた魚たちが、氷上で遊ぶように跳ね泳ぐ様子を表しています。

 

雨水(うすい)新暦2月19日ごろ。

雪氷がとけて雨水となるころ。地上にもいよいよ陽気が発生し、活動を始めた大地からは水蒸気が立ちのぼり、辺りは霞でおおわれる。草木の芽吹きを見れば、人々の心にも春の鼓動が感じられるようになります。

土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)新暦2月19日~23日ごろ。
土が湿り気を含み出す時期。大地がゆるみ、地中のものが脈々と目覚める様子を表しています。「脉(みゃく)」は「脈」の俗字です。

霞始靆(かすみはじめてたなびく)新暦2月24日~28日ごろ。
霞がたなびき始める時期。山のふもとに白い霞がたなびくと、胸の中にも喜びがたなびき、訪れる春への期待がふくらむ様子を表しています。

草木萠動(そうもくめばえいずる)新暦3月1日~5日ごろ。
草木が芽を出し始める時期。木々の枝先でふくらんだ新芽が芽吹き始め、春の兆しの真っただ中にいる自然界を表しています。

 

仲春 旧暦2月 新暦3月

日に日にふくらむ木々の芽は、純粋でみずみずしいだけでなく、自然の厳しさにも負けない力強さも感じさせます。私たちの心にも、成長する勇気を与えてくれているようです。

植物,花,桜,ピンク色

美しく咲いた桜の花

啓蟄(けいちつ)新暦3月6日ごろ。

地中にいた虫が地上に出てくるころ。昔は、昆虫だけでなく、蛇や蛙なども虫といいました。寒さに耐えて過ごしてきた虫たちも、土の中に届く暖かい気配を感じ、穴の中から這い出してきます。地上に目をやれば、桃の花が咲き始め、青虫が蝶に変身して辺りを舞い始めます。

蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)新暦3月6日~10日ごろ。
地中の虫が外に這い出す時期。土の中で冬ごもりをしていた虫たちが、土の扉を開けてうごめく様子を表しています。昔は小さな生き物すべてを「虫」といい、蛇や蛙、蜥蜴(とかげ)なども含みました。「啓く(ひらく)」は「開く」を意味します。

桃始笑(ももはじめてさく)新暦3月11日~15日ごろ。
桃の花が開き始める時期。花が開き、あたりの空気も桃色に春めいてにぎやかになる様子を表しています。「笑う」は「花が咲く」を意味します。

菜虫蝶花(なむしちょうとなる)新暦3月16日~20日ごろ。
青虫が羽化して蝶になる時期。大根やキャベツなどの葉につく青虫が、さなぎから蝶になり、羽を広げて空を舞う様子を表しています。

 

春分(しゅんぶん)新暦3月21日ごろ。

昼夜の長さがほぼ等しくなり、ようやく気温が安定するころ。雀の巣作りが始まり、花の代表ともいえる桜の季節がやって来ます。後半には、春の陽気に浮かれがちな私たちの心に、喝を入れるかのように雷が鳴り響きます。

雀始巣(すずめはじめてすくう)新暦3月21日~25日ごろ。
雀(すずめ)が巣を作り始める時期。雀が軒先の隙間などに巣を作り始めれば、いよいよ待ちわびた春がやって来ることを表しています。

桜始開(さくらはじめてひらく)新暦3月26日~30日ごろ。
桜が咲き始める時期。景色が薄紅色の花びらで染まり、春爛漫である様子を表しています。

雷乃声発(かみなりすなわちこえをはっす)新暦3月31日~4月4日ごろ。
雷が鳴り始める時期。遠くで響く春雷は生命のとどろき。ぼんやりしがちな春の心も目覚めさせる様子を表しています。

 

晩春 旧暦3月 新暦4月

咲き誇っていた桜も散る時期を迎えます。夢のようにはかなく散っていく様に、行く春を惜しむ気持ちがつのります。

植物,葦,緑,水辺

みずみずしく生長する葦

清明(せいめい)新暦4月5日ごろ。

清々しい日が続くころ。清明とは清浄明潔の略だといわれ、清らかで明るいことをいいます。芽生えた草木が、いきいきと輝き出す季節ともいえます。空に目をやれば、燕が渡って来るのと入れ替わるように雁が帰って行きます。出会いと別れがあるものの、希望を感じさせる虹がかかります。

玄鳥至(つばめきたる)新暦4月5日~9日ごろ。
燕(つばめ)が渡ってくる時期。日本で生まれ育つ燕が南国で冬を過ごし、故郷へ帰ってくる様子を表しています。「玄」は黒を意味し、「玄鳥」は燕の異称です。

鴻雁北(こうがんかえる)新暦4月10日~14日ごろ。
雁(がん)が北へ帰っていく時期。秋に飛来した雁の群れは、燕と入れ替わるように北の地方に帰ります。出会いと別れが春空を飛び交う様子を表しています。

虹始見(にじはじめてあらわる)新暦4月15日~19日ごろ。
虹が出始める時期。大気がうるおい始めると虹がよく見られるようになります。空に架かる七色の虹の美しさに心もうるおって彩られる様子を表しています。

 

穀雨(こくう)新暦4月20日ごろ。

春雨が降って穀物の種が生長するころ。穀雨は穀物を潤す雨のことをいいますが、その雨は穀物だけでなく、さまざまな植物を育んでいきます。水辺では葦がとがった芽を出し、稲の苗もすくすくと伸びていきます。そして、春から夏へと季節の橋渡しをするように牡丹の花が華麗に花を咲かせます。

葭始生(あしはじめてしょうず)新暦4月20日~24日ごろ。
葦(あし)が芽吹き始める時期。葦の新芽はとがっており、水面から角のように出てくるため「葦牙(かび)」と呼ばれています。精気に満ちた葦が泥土を貫いて、ぐんぐん生長していく姿を表しています。

霜止苗出(しもやみてなえいずる)新暦4月25日~29日ごろ。
苗代で稲が生き生きと育つ時期。北国の霜も終わり、苗代の苗が青々と育ちます。草木も日ごとに若芽を増して生命力にあふれる様子を表しています。

牡丹華(ぼたんはなさく)新暦4月30日~5月4日ごろ。
牡丹の開花が見られる時期。幾重にも重なった花びらが、ゆったりとほどけるように開いていく様子を表しています。「華く(はなさく)」は「花が咲く」を意味します。

 

次は、夏の季節です。
夏は、旧暦では4~6月、新暦では5~7月ごろのことを指します。

初夏 旧暦4月 新暦5月

新緑の香り、すがすがしい風。空は晴れわたり、和やかな空気に包まれます。

植物,花,紅花,黄色

紅花(末摘花)

立夏(りっか)新暦5月5日ごろ。

夏の気配が立ち始めるころ。木々の緑はより鮮やかになり、まぶしい陽射しに初夏らしさ感じます。蛙が鳴き始め、蚯蚓が姿を表し、旬の筍が生え始めます。

蛙始鳴(かわずはじめてなく)新暦5月5日~9日ごろ。
蛙が鳴き始める時期。池や沼に蛙の声が響くようになり、野山の若葉もみずみずしく輝き、まもなく訪れる夏の様子を表しています。

蚯蚓出(みみずいずる)新暦5月10日~14日ごろ。
蚯蚓(みみず)が地上に這い出す時期。蚯蚓が土の上で忙しくうごめくと、土壌もいっそう豊かになり、青葉が濃さを増す様子を表しています。

竹笋生(たけのこしょうず)新暦5月15日~20日ごろ。
筍(たけのこ)が生えてくる時期。竹の子が顔を出し、夏の気配をのせた風が竹林を吹き抜ける様子を表しています。「竹笋(ちくじゅん)」は「竹の子」を意味します。

 

小満(しょうまん)新暦5月21日ごろ。

万物が成長して天地に満ち始めるころ。小満の本来の意味は、麦の穂の成長を示すものですが、やがて万物の成長と解釈されるようになりました。動植物の躍動感が感じられる季節です。

蚕起桑食(かいこおきてくわをはむ)新暦5月21日~25日ごろ。
孵化(ふか)した蚕が桑を食べる時期。植物が大地に満ちるころになると、蚕の食欲もいっそう旺盛になり、よく育つ様子を表しています。

紅花栄(べにばなさかう)新暦5月26日~30日。
紅花が盛んに咲く時期。紅黄色の紅花が畑に灯るように咲き出し、木々がいっそう緑を深める様子を表しています。紅花の古名は「末摘花(すえつむはな)」です。

麦秋至(むぎのときいたる)新暦5月31日~6月5日ごろ。
麦が実る時期。薫風が、穂を揺らしながら心地よく吹き抜ける様子を表しています。「麦秋(ばくしゅう)」は実が熟す時期を意味します。

 

仲夏 旧暦5月 新暦6月

すがすがしく晴れやかな日々から梅雨の季節へと移り変わります。

植物,木,梅の実,黄色

熟し始める梅の実

芒種(ぼうしゅ)新暦6月6日ごろ。

穀物の種をまく時期。芒(のぎ)は、イネ科の植物特有の、細い毛のような部分のことをいいます。麦は収穫の時期を、稲は田植えの時期を迎えます。蟷螂や蛍が成長し、梅の実は青から黄色へと熟していきます。

蟷螂生(かまきりしょうず)新暦6月6日~10日ごろ。
蟷螂(かまきり)が生まれる時期。秋に葉陰についた卵から小さな子たちが出てくる様子を表しています。

腐草蛍為(くされたるくさほたるとなる)新暦6月11日~15日ごろ。
蛍が光り出す時期。蛍の異名は「朽草(くちくさ)」です。昔の人は、朽ちた草が蛍になったと考えていました。さなぎから孵化(ふか)した蛍が、蒸れた草の下から夕闇に美しい光を放って舞う様子を表しています。

梅子黄(うめのみきばむ)新暦6月16日~21日ごろ。
梅の実が黄ばんで熟す時期。少し前まで青かった梅の実がふっくらと黄色味を帯び、甘酸っぱい香りを漂わせている様子を表しています。

 

夏至(げし)新暦6月22日ごろ。

1年で一番、昼が長い日。暦の上では真夏を迎えますが、実際には梅雨の真っ最中です。太陽の姿も見えず、どんよりとした空の下、ひっそりと咲く花々のあでやかさが目を引きます。

乃東枯(だいとうかれる)新暦6月22日~26日ごろ。
靭草(うつぼぐさ)が枯れる時期。「乃東(だいとう)」は「夏枯草(かこそう)」の古名です。いずれの草木も繁茂する中で、夏草のみがむなしく果てていく様子を表しています。

菖蒲華(あやめはなさく)新暦6月27日~7月1日ごろ。
菖蒲(あやめ)の花が咲く時期。草地にすっくと立ち咲く菖蒲が、紫色の花びらを開いて清楚な色香を漂わせている様子を表しています。

半夏生(はんげしょうず)新暦7月2日~6日ごろ。
半夏(烏柄杓:からすびしゃく)が生える時期。烏柄杓は、緑色の仏焔苞(ぶつえんほう:苞が大型に変化して、花びらのようになったもの)に包まれた細長い袋のような花が特徴です。

 

晩夏 旧暦6月 新暦7月

さて、梅雨が明けると、いよいよ本格的な夏の到来です。

植物,花,蓮,ピンク色

幻想的に咲く蓮の花

小暑(しょうしょ)新暦7月7日ごろ。

暑さが増してくるころ。今か今かと梅雨明けに対する人々の関心も高まります。あたたかい南風、蓮の花の開花、鷹の子の成長。季節は確実に進んでいると感じられます。

温風至(あつかぜいたる)新暦7月7日~11日ごろ。
あたたかい南風が吹く時期。「温風」とは「あたたかい南風」を意味します。梅雨が明け、照るような夏の日差しとなっていく様子を表しています。

蓮始開(はすはじめてひらく)新暦7月12日~16日ごろ。
蓮の花が開き始める時期。水面に大きく広がる葉の間から、白や薄桃色の花が開き、神聖な美しさが葉の露に光る様子を表しています。

鷹乃学習(たかすなわちわざをならう)新暦7月17日~22日ごろ。
鷹の子が飛び方を学ぶ時期。成長したひなが飛び立ち、大空と木々の間を滑空し、巣立ちのころが近い様子を表しています。

 

大暑(たいしょ)新暦7月23日ごろ。

暑さが最も激しくなるころ。梅雨も明け、強烈な陽射しが照りつけます。大雨の頻度が多くなると、夏の終わりが近づいていることを感じます。

桐始花結(きりはじめてはなをむすぶ)新暦7月23日~28日ごろ。
桐の花が実を結ぶ時期。5月に藤色の花を咲かせ結実し、卵型の堅い実になる様子を表しています。「結ぶ」は「固まる」を意味します。

土潤潯暑(つちうるおうてむしあつし)新暦7月29日~8月2日ごろ。
土が湿り蒸し暑くなる時期。身にまといつくような酷暑がじっとりと続く様子を表しています。「潯暑(じゅくしょ)」は「湿った暑さ」を意味します。

大雨時行(たいうときどきふる)新暦8月3日~7日ごろ。
大雨が時々降る時期。夏の夕暮れ、突然の雷鳴とともに激しい夕立が起こり、酷暑の夏も雨だれの流れにのって秋の気配になっていく様子を表しています。

 

次は、秋の季節です。
秋は、旧暦では7~9月、新暦では8~10月ごろのことを指します。

初秋 旧暦7月 新暦8月

夏の蒸し暑さも峠を越え、暦の上では秋を迎えます。風や空の様子から、秋を感じることが多くなります。

植物,木,綿花,白色

白くやわらかな綿の花

立秋(りっしゅう)新暦8月8日ごろ。

秋の気配が立ち始めるころ。日没後に吹く心地よい風、どこか寂し気な蜩の声。夏から秋への変化が感じられ始めます。

涼風至(すずかぜいたる)新暦8月8日~12日ごろ。
涼しい風が吹き始める時期。木の葉を揺らす風のそよぎ、雲の色や形など、さわやかな秋の様子を表しています。

寒蝉鳴(ひぐらしなく)新暦8月13日~17日ごろ。
蜩(ひぐらし)が鳴く時期。夕刻、木立からカナカナという鳴き声が響き、秋の近い様子を表しています。

蒙霧升隆(ふかききりまとう)新暦8月18日~22日ごろ。
深い霧が立つ時期。むせぶような霧が隆々と湧き、木立の朝に光る様子を表しています。「蒙霧(もうむ)」は「もうもうと立ち込める霧」を意味します。

 

処暑(しょしょ)新暦8月23日ごろ。

暑さが止み、朝夕が涼しくなるころ。「処」は「落ち着く」という意味を持っています。綿花を始め、秋の花が咲きそろい、いよいよ稲が実りのときを迎えます。

綿柎開(わたのはなしべひらく)新暦8月23日~27日ごろ。
綿の実が弾け綿花がのぞく時期。綿の青い実が熟して白綿がふわりと弾ける様子を表しています。「柎(はなしべ)」は「花のガク」を意味します。

天地始粛(てんちはじめてさむし)新暦8月28日~9月1日ごろ。
暑さの勢いが落ち着く時期。涼風が心地よく大地に吹き渡る様子を表しています。「粛(さむし)」は「衰える」「縮む」を意味します。

禾ノ登(こくものすなわちみのる)新暦9月2日~7日ごろ。
稲が実る時期。台風が過ぎ、稲穂が黄色く頭を垂れている様子を表しています。「禾(こくもの)」は「稲」を意味します。

 

仲秋 旧暦8月 新暦9月

暑さでしおれていた草や葉が活力を取り戻していくころ。秋らしさを色濃く感じられるようになります。

鳥,セキレイ,灰色

小さなセキレイ

白露(はくろ)新暦9月8日ごろ。

秋めいてくるころ。空気中の水蒸気が冷えて、朝には草木に露がつくようになります。鶺鴒や燕の旅立ちの様子が秋の深まりを感じさせます。

草露白(くさのつゆしろし)新暦9月8日~12日ごろ。
露が白く光って見える時期。朝晩の風も涼しくなり、草木に宿る白露が、秋の趣をひとしお感じさせる様子を表しています。

鶺鴒鳴(せきれいなく)新暦9月13日~17日ごろ。
鶺鴒(せきれい)が鳴く時期。鈴のように高い声を放ちながら、秋の空をさわやかに飛んでいく様子を表しています。

玄鳥去(つばめさる)新暦9月18日~22日ごろ。
燕(つばめ)が南の国へ渡っていく時期。子育てを終え、季節の移り変わりとともに南へと帰る様子を表しています。

 

秋分(しゅうぶん)新暦9月23日ごろ。

昼夜の長さがほぼ等しい日。暦の上では秋の真ん中を迎えます。雷が鳴らなくなり、虫たちの冬ごもりが始まります。田では稲刈りに備え、水を抜きます。

雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)新暦9月23日~27日ごろ。
雷が鳴らなくなる時期。夏の空を騒がせていた大気も安定し、いよいよ本格的な秋がやってくる様子を表しています。

蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)新暦9月28日~10月2日ごろ。
虫が冬支度を始める時期。外で活動していた虫たちが徐々に寒さを覚え、土の中にもぐって隠れだす様子を表しています。「坏(はい)」は「ふさぐ」を意味します。

水始涸(みずはじめてかるる)新暦10月3日~7日ごろ。
水田を干し、稲刈りに備える時期。成熟した稲が刈り入れ時を迎え、実りの秋を実感する様子を表しています。「涸(こ)」は「干す」を意味します。

 

晩秋 旧暦9月 新暦10月

実りの季節を迎えます。木の葉も染まり出し、自然は彩り豊かになります。私たちの心も豊かになっていくようです。

植物,花,野菊,黄色

可憐に咲く野菊

寒露(かんろ)新暦10月8日ごろ。

草木に冷たい露がつくころ。白露のことには、きらきらと輝いて見えた露も、寒々として眺められるようになります。

鴻雁来(こうがんきたる)新暦10月8日~12日ごろ。
雁(がん)が北の国から渡ってくる時期。秋風が冷たい静かな夜に、月の前を優雅に横切る姿の美しさを表しています。

菊花開(きくのはなひらく)新暦10月13日~17日ごろ。
菊の花が咲き始める時期。丹精込めて大輪に育てた華やかな菊や、あちこちでひっそりと咲く野菊により、秋が深まる様子を表しています。

蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)新暦10月18日~22日ごろ。
秋の虫が戸口で鳴く時期。蟋蟀(こおろぎ)の澄んだ声色には、哀愁さえ漂っている様子を表しています。蟋蟀は平安時代には「きりぎりす」を呼ばれていました。

 

霜降(そうこう)新暦10月23日ごろ。

霜が降り始めるころ。日増しに気温が下がり、時々冷たい雨が降ります。紅葉の深まりと同時に、行く秋に感傷的になることもあります。

霜始降(しもはじめてふる)新暦10月23日~27日ごろ。
霜が降り始める時期。誰もが冬支度を始め、まもなく訪れる霜降月(11月)を待つ様子を表しています。

霎時施(こさめときどきふる)新暦10月28日~11月1日ごろ。
小雨が時々降る時期。さわやかに続く秋晴れも、そろそろ終わりの季節を迎える様子を表しています。「霎(しょう)」は「小雨」を意味します。

楓蔦黄(もみじつたきばむ)新暦11月2日~6日ごろ。
紅葉が深まる時期。赤い紅葉も雅やかだが、落ち着いた黄葉も趣があり、やがて落葉し、冬がやってくる様子を表しています。

 

最後は、冬の季節です。
冬は、旧暦では10~12月、新暦では11~1月ごろのことを指します。

初冬 旧暦10月 新暦11月

初冬の天候は雨になりがちですが、「小春日和」ともいわれるように、晴れると、穏やかで春のような日になることもあります。

植物,花,サザンカ,山茶花,白色

清楚に咲く山茶花

立冬(りっとう)新暦11月7日ごろ。

冬の気配が立ち始めるころ。木枯らしが吹き、大地は凍り始めます。はらはらと舞い落ちる紅葉に代わって、冬を告げる山茶花や水仙が咲き始めます。

山茶始開(つばきはじめてひらく)新暦11月7日~11日ごろ。
山茶花(さざんか)が咲き始める時期。時雨の季節に、鮮やかな紅色や桃色、白色が映える様子を表しています。「山茶(さんさ)」は「椿(つばき)」の漢名です。

地始凍(ちはじめてこおる)新暦11月12日~16日ごろ。
大地が凍り始める時期。初霜が降り始め、冬を感じる様子を表しています。

金盞香(きんせんかさく)新暦11月17日~21日ごろ。
水仙が咲く時期。冬の気配がさらに強くなる中、金盞(きんせん:水仙)の花が凛と咲き、ほのかな香りを放つ様子を表しています。

 

小雪(しょうせつ)新暦11月22日ごろ。

初雪が降り始めるころ。北国や山岳地帯では雪が見られるようになり、平地でも花びらのように雪がちらちらと舞うようになります。雨も降らなくなり虹が見られなくなりますが、柑橘類の実が黄色く色付いてきます。

虹蔵不見(にじかくれてみえず)新暦11月22日~26日ごろ。
虹を見かけなくなる時期。冷たい風が冬の到来を感じさせ、空からも陽気が消え、虹さえも見かけなくなる様子を表しています。「蔵(ぞう)」は「隠れる」を意味します。

朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)新暦11月27日~12月1日ごろ。
北風が木の葉を散らす時期。朔風(さくふう:北から吹いてくる風)により木の葉が舞い散り、いよいよ真冬が到来する様子を表しています。

橘始黄(たちばなはじめてきばむ)新暦12月2日~6日ごろ。
橘の実が黄色く色づく時期。みかん・橘の葉が黄葉し始める様子を表しています。「橘(たちばな)」は、古代、田道間守(たじまもり)が常世(とこよ)の国から持ち帰ったものといわれ、神聖な植物として扱われていました。

 

仲冬 旧暦11月 新暦12月

冬も半ばを迎え、冷え込みがいっそう厳しくなります。雪が降り積もり始め、さまざまな動物が冬眠に入ります。一方では、春に向けて準備を始める力強さも感じられる時期でもあります。

風景,日本,雪,光

美しい冬の風景

大雪(たいせつ)新暦12月7日ごろ。

北風が強くなり、雪が盛んに降るころ。すべてが休止してしまったかのようですが、命をつなぐための大事な時期ともいえます。

閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)新暦12月7日~11日ごろ。
重い冬雲が空を覆う時期。天地にも寒風が吹き、本格的な冬となる様子を表しています。「閉塞(へいそく)」とは「塞がる(ふさがる)」を意味します。

熊蟄穴(くまあなにこもる)新暦12月12日~16日ごろ。
熊が冬眠に入る時期。冬が次第に深まり始め、熊も冬支度を始める様子を表しています。「蟄れる(かくれる)」は、動物が地中に隠れることを意味します。

鮭魚群(さけのうおむらがる)新暦12月17日~21日ごろ。
鮭が群れをなして川を上る時期。厳しい寒さの中でも、生命力の強さを感じさせる様子を表しています。

 

冬至(とうじ)新暦12月22日ごろ。

1年で一番、夜が長い日。寒さは厳しくなるばかりですが、この日を境に日脚が伸びていきます。目に見えないところでは着実に春を迎える準備が始まっています。

乃東生(なつかれくさしょうず)新暦12月22日~26日ごろ。
靭草(うつぼぐさ)が芽を出す時期。夏至のころに枯れる乃東(だいとう)のみが緑色の芽を出し始める様子を表しています。乃東(だいとう)の古名は、夏枯草(かこそう)といいます。

麋角解(さわしかのつのおる)新暦12月27日~31日ごろ。
大鹿の角が落ちる時期。トナカイの一種である大鹿の「なれ鹿」も、その角を落とすころとなり、来春に向けて新しい角に生え変わる様子を表しています。

雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる)新暦1月1日~4日ごろ。
雪の下で麦が伸びる時期。辺り一面が真っ白な雪に覆われていても、その下で麦の芽が出始め、まもなく新春が訪れる様子を表しています。

 

晩冬 旧暦12月 新暦1月

旧暦の時代では、晩冬は一年の終わりでもあります。寒さは最も厳しい時期となりますが、氷解けの水音を合図に、雉や鶏が動き出せば、春はもうすぐそこまでやって来ています。

植物,山菜,ふきのとう,緑

春を伝えるふきのとう

小寒(しょうかん)新暦1月5日ごろ。

寒気が増してくるころ。厳しい寒さが新年を迎えた新鮮な気持ちをより一層引き締めてくれます。新春に萌え出た若菜を食べ、新しい生命力を身に付けます。

芹乃栄(せりすなわちさかう)新暦1月5日~9日ごろ。
芹(せり)が盛んに生える時期。小川や田んぼのあぜに茂る、芹の青々とした香りに春がほのかに薫る様子を表しています。

水泉動(しみずあたたかをふくむ)新暦1月10日~14日ごろ。
凍った泉で水が動き始める時期。氷がとけ始めた水音に、春の足音を感じる様子を表しています。「水泉」は「湧き出る泉」を意味します。

野雞始雊(きじはじめてなく)新暦1月15日~19日ごろ。
雉(きじ)が初めて鳴く時期。雉の雄鳥の力強い鳴き声に、春の目覚めの声が聞こえてくる様子を表しています。「野雞(やけい)」は「雉」、「雊く(なく)」は「雄の雉が鳴く」を意味します。

 

大寒(だいかん)新暦1月20日ごろ。

寒気が最も激しくなるころ。とはいえ、雪の間から蕗の薹が顔をのぞかせ、春の到来を告げています。大寒の次は必ず立春。再び命の営みが繰り返されていきます。

欵冬華(ふきのはなさく)新暦1月20日~24日ごろ。
蕗の薹(ふきのとう)が顔を出す時期。足元に顔を出す蕗の薹が、大地の春をそっと教えてくれる様子を表しています。「欵冬(かんとう)」は「蕗(ふき)」を意味します。

水沢腹堅(さわみずこおりつめる)新暦1月25日~29日ごろ。
沢に氷が張りつめる時期。谷川や湿原の浅瀬の水が凍り、氷が厚くかたく張る様子を表しています。「水沢」は「水のある沢」、「腹く(あつく)」は「厚く」を意味します。

雞始乳(にわとりはじめてとやにつく)新暦1月30日~2月3日ごろ。
鶏が卵を産み始める時期。鶏が春の気配を感じて鳥屋(とや)にこもり、卵を産み始める様子を表しています。「乳す(ちす)」は「鶏が卵を産む」を意味します。

 

まとめ

二十四節気や七十二候は、どちらも季節を知るための工夫により作られた言葉。

昔の人々の生活にとって最も重要なものは農作業。現在ほど技術が発展していない時代には、自然の変化を細かく読み取ることが必要だった。

初めて知るような言葉や現実にはありえないような表現もあることから、昔の人々は、情緒豊かでユニークな発想をしていたことが垣間見える。

 

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