お彼岸といえば、お墓参りに行くのが一般的ですが、なぜ先祖供養をするようになったのでしょうか。
お彼岸とは
お彼岸とは雑節のひとつで、春と秋の年2回、春は3月17日~23日ごろ、秋は9月18日~25日ごろを示します。お彼岸の期間には、ご先祖供養のためにお墓参りなどに行くのが一般的です。
お彼岸は、春分の日・秋分の日を中日に、前後3日間ずつの合計7日間あり、最初の日を「彼岸の入り」、最後の日を「彼岸の明け」と呼びます。
仏教では、極楽は西にあると考えられているため(西方浄土説)、太陽がほぼ真西に沈む春分の日や秋分の日に先祖供養が行われます。
また、お彼岸は体感的にもちょうどいい気候の真ん中にあたり、何事においても中央を重んじる仏教の「中道」の精神から、この日にお参りをするようになったともいわれます。
お彼岸の由来
お彼岸の由来は平安初期にあるといわれ、日本独自の先祖供養の風習と仏教行事である「法会(ほうえ):亡くなった人の供養をすること」が結びついたとされています。
お彼岸は「日願(ひがん):太陽(日)をひたすらに思うこと」でもあるため、太陽の神を信仰する神道とも結びやすかったと考えられます。
お彼岸の風習は、インドなど他の仏教国にはなく、日本だけの行事です。春の種まきや秋の収穫とも結びつき、大切な国民の祝日となりました。
あの世とこの世
「彼岸」の対義語は「此岸(しがん)」です。彼岸とは「あの世」のことをいい、対して、此岸(しがん)とは「この世」のことをいいます。彼岸とは、梵語の「波羅蜜多(はらみつた)」の訳語で、「至彼岸(悟りの境地に達する)」を略したものとされています。
極楽にいるというご先祖様は、何も考えることがありません。「人はなぜ生きるのか」「死んだらどうなるのか」といった人生の大命題の答えをすでに「知っている」ため、考える必要がないのです。
この「悟り」の境地に近づく方法のひとつとして、お墓参りや読経(どきょう)があるとされています。つまり、お墓参りは、此岸にいる私たちを取り巻く日々の迷いや悩み、煩悩などをリセットする行為ともいえるのです。
暑さ寒さも彼岸まで
「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉は、季節の変わり目でもあるお彼岸の時期は、暑さも寒さもだいぶ落ち着き、過ごしやすくなってくるということを表しています。
農作業のひとつの区切りとなる日でもあり、豊作を願って、この日から農作業を始めるところもあります。
英語では次のようにいいます。
Neither heat nor cold lasts beyond the equinox.
お彼岸と先祖供養
ここでは、お墓参りの作法を簡単にご紹介します。宗派や地域によって異なる場合もありますが、ご先祖様に感謝する「心」が、なによりも大切です。
①ご本堂にお参りする
霊園の場合は管理事務所などにごあいさつします。お寺の場合は、まずは住職にごあいさつをし、それから、ご本堂やご本尊にお参りします。
手を洗い清めてから、手桶やひしゃく、ほうき(これらは貸してもらえる場合が多い)などの準備をします。お線香やお供えの花や食べ物は、汚れないところに置いておきます。
②お墓を清める
お墓の前では、まず合掌します。それから、お墓を清めるため、ほうきで掃いたり、雑草を抜いたりして掃除をします。
墓石は、手桶からきれいな水を静かにかけて清めます。やわらかいスポンジなどを使い、傷をつけないように汚れを落とします。水気はタオルなどで拭き取ります。
花立や香炉、水鉢も同様に掃除します。最後に、水鉢にきれいな水を入れて終了です。
③お供えをして、お線香をたく
お供えする花はお墓に残して帰るため、倒れないように短く切って花立に入れます。お供えの食べ物は、二つ折にした半紙にのせ、お参りが終わったら持ち帰ります。
お線香は束のまま火をつけ、炎は手であおいで消し、先端だけが赤く灯った状態にします。
④合掌・礼拝をする
ひしゃくで墓石に水をかけ、墓石の正面に向かい、合掌・礼拝をします。日々の感謝の気持ちや近況報告をします。
お線香は燃やしきってから帰るのがマナーなので、亡き人との心の会話をゆっくりと楽しみます。
⑤後片付けをする
掃除の際に出たごみや雑草を拾い、借りた手桶などは所定の場所に戻します。管理事務所や住職に声をかけて帰ります。
春彼岸と秋彼岸
春彼岸も秋彼岸も行うことは同じですが、お供えする花や食べ物が変わります。季節感を大事にする日本ならではの感覚です。
春彼岸
ぼたもち
春の花の牡丹に見立てた和菓子です。こしあんで作るのが一般的です。
「牡丹」は漢名で、「ぼうたん」ともいいます。朝鮮半島北部から中国東北地方にあった渤海(ぼっかい=ふかみ)という国から伝わったとされ、古くは「深見草(ふかみぐさ)」とも呼ばれました。
木蓮(もくれん)
蓮の花に似ていることから名付けられています。
モクレン(紫の花)の開花は、3月末~4月末。ハクモクレン(白い花)の開花は、3月~4月。
沈丁花(じんちょうげ)
沈香(じんこう:香木のひとつ。特に良質のものを「伽羅(きゃら)」という。甘い香りが特徴。)と丁子(ちょうじ:クローブともいう。花蕾が釘に似ていることから「丁」の字が使われている。強い香気を持っている。)を合わせた名前です。
20個ほどの小さな白い花が、枝の先に手鞠状にかたまって咲きます。強い芳香を放ちます。
秋彼岸
おはぎ
秋の花の萩に見立てた和菓子です。つぶあんで作るのが一般的です。
「萩」という字は、日本人が考えた国字です。
彼岸花(ひがんばな)
秋のお彼岸に合わせたかのように花を咲かせます。
古代インドのサンスクリット語では「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」といい、「天上に咲く花」という意味があり、その姿を見ると、慶びの兆しがあるという言い伝えがあります。
茎には毒があるため、もぐらや害虫除けの目的で墓地や畑の畦(あぜ:田と田の間に土を盛り、堺としたもの)に植えられたともいわれます。
秋桜(あきざくら)
コスモスのことです。花の形、あるいは、群がって咲くようすが桜に似ていることから名付けられました。
もともとはメキシコの植物で、明治時代の中頃に日本に渡来し、広まりました。
小豆(あずき)
昔の人は、太陽の色を「赤」と定め、あらゆる邪気を払う力がある魔除けの色と考えていました。
小豆の色も、やや茶色がかった色ですが「赤」とされ、邪気を払う色とされてきました。そのため、ご先祖供養する彼岸でも邪気を払う食べ物として、小豆を使った「ぼたもち」や「おはぎ」をお供えするようになったといいます。
まとめ
お彼岸とは雑節のひとつで、春と秋の年2回、春は3月17日~23日ごろ、秋は9月18日~25日ごろを示す。
お彼岸の期間には、ご先祖供養のためにお墓参りなどに行くのが一般的。
私たちを取り巻く日々の迷いや悩み、煩悩などをリセットするためにお墓参りをするとも考えられる。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!